【インタビュー】倉方慶子さん・胡眞子さん(富士通コミュニケーションサービス株式会社)

[公開日] [最終更新日]2019/07/03

【インタビュー】倉方慶子さん・胡眞子さん(富士通コミュニケーションサービス株式会社)

今回のイクボスロールモデルインタビューは、富士通コミュニケーションサービス株式会社 ソリューション本部 第六事業部 第二サービス部 部長・倉方慶子さんと、九州センター支援部ダイバーシティ推進担当・胡眞子さん。

同社の北九州黒崎サポートセンターが2年前から始めた採用戦略「ワタシすまいるプロジェクト」が注目されている。同プロジェクトは、主に「育児中の眠れる主婦人材」を掘り起こし、活躍してもらうというもの。気軽に自分の目で会社の中を見て、雰囲気を感じることができる「社内見学ツアー」、職場見学に来てくれた人たちとつながり続けるためのメルマガ、それぞれの事情や要望に沿うキャリアプラン・勤務シフトの提供。

この3本柱を中心に、「働きやすい職場」としての認知度アップを図りつつ、中長期的な視野で採用活動を進めている。現場主導で始まったという「ワタシすまいる」について、倉方さんと胡さんに話を聞く。

「いずれは働きたい!」という主婦層を発掘

―「ワタシすまいるプロジェクト」発足に至る経緯を教えてください。

倉方:きっかけは、やはり人手不足です。採用しないといけない、でも人材がいない。さらに、せっかく採用しても必ずしも定着せず、現場では苦労が続いていました。そこで、家庭に眠っている主婦の力を何とか活かせないか、という思いで始めたのが「ワタシすまいる」です。しかし、私たちは採用に関するスキルは持っていましたが、「今は家庭にいるけれど、いずれは仕事をしたい」という人たちへのアプローチ法が分かりませんでした。そこで、現場力のあるコンサルティング会社に協力をあおぎ、「ワタシすまいる」プロジェクトが動き出したのです。

―業務拡大の受け皿として、優秀な人材確保は必須ですね。「ワタシすまいる」を始める前は、独身の若い方が多かったとうかがいました。

倉方:そうですね。「ワタシすまいる」開始前は、単時間勤務スタッフは全体の3%、7人でした。それが「ワタシすまいる」開始の2年後には、28%、78人までに。11倍ですね。シフトの種類も20程度だったものが80まで増えています。(さまざまな雇用体系を増やすことは)人事部門にとって煩雑なのですが、背景を説明して協力を仰ぎました。「巻き込む」ことは大切だと感じました。

【インタビュー】倉方慶子さん・胡眞子さん(富士通コミュニケーションサービス株式会社)

(写真左:胡眞子さん、右:倉方慶子さん)



―始めたばかりの頃、社内ではどんな反応でしたか?

倉方:現場文化醸成には苦戦しました。最初は男性管理者に「いいですね、その活動。でもボクのチームには採用しないでくださいね」なんて言われることも(笑)。「シフト管理が大変だから」って。そこで私は、「じゃあ、一緒にシフト組んでみよう」と掛け合いました。「勤務時間がバラバラだと研修が大変」と言われれば、「ずっと集合研修の必要がある?」「これは動画で大丈夫じゃない?」と、できない理由を一つ一つ崩していきました。根気強く続けた結果、みんなが工夫するようになり、「できない」ではなく、「どうしたらできるか」を考えてくれるようになりました。今では部門改革が進み、eラーニングや動画研修がかなり採用されています。
朝礼やミーティングでも、(「ワタシすまいる」のメリットを)繰り返し訴えかけました。「少子高齢化は誰もが知ってるよね? これからは外国人?シニア?私は英語強くないけれど、みんなできる?」って(笑)。

―すごく手間暇とエネルギーがかかったでしょう?

倉方:手間は惜しみませんでしたし、仲間を作りました。1人では絶対にできなかったですね。部門内だけではなく、ダイバーシティ推進室や関連部門と一枚岩になれたことが、成功につながったのだと思います。

頑張り屋のママたちが一つずつ成長して、ロールモデルとして見せられるようになったことも大きかったですね。彼女たちは、雇用形態も就業シフトも年代もさまざま。もちろん、正社員でリーダーとしてバリバリ活躍している人もいる。いろんなモデルケースがいることで、きれいごとではなく身近に感じてもらえます。

―「ワタシすまいる」を始めてよかったことはありますか?

倉方:女性活躍推進というと、トップダウンで始まることが多いのですが、弊社では現場主導というところが特徴です。ただ、始める以上は、ビジネス戦略として成功させなければいけませんでした。目に見える成果が現れだしたのは2年目から。採用の課題解決がきっかけでしたが、採用実績はもちろんのこと、現場全体でプロジェクトを推進していくことによる社員満足度の向上、離職率の低下、業績向上と、結果が出てきています。今では、黒崎センターの成功モデルを仙台センターにも展開しています。「女性活躍推進は、経営戦略だ」とよく言われますが、まさにその通りだと感じています。

―女性活躍推進と経営戦略。このプロジェクトによってしっかり結びつけていったのですね。

復帰しやすい職場環境づくり


―子育て中、介護中の社員など制約があるスタッフに対するケアを教えてください。

胡:センターが大きくなるにつれて、育児休暇をとって復職するスタッフが増えました。当社では、法定で3歳までと定められている育児時短勤務が小学校卒業まで取得可能であったり、男性の育児休暇取得実績もあり、継続して各種制度の充実化を図っています。ただ、私たちは“その先”をもう少し、整えたかった。もっと安心して復職してもらいたいという思いから現場での取り組みとして始めたのが、「おかえりなさいデー」です。復帰1日目をダイバーシティ推進室に託していただき、休んでいる間の会社についてフィードバックする時間に充てています。北九州サポートセンターでは、部署移動やレイアウトの変更が頻繁に行われますので、社内見学もしていますね。

―ブランクがある人の、心のハードルを下げるのですね。

【インタビュー】倉方慶子さん・胡眞子さん(富士通コミュニケーションサービス株式会社)胡:これは、現場の意見から生まれた取り組みです。ママ社員を集めた座談会で、「1人目を生んで戻ってきた初日が一番怖かった」という声が多数上がりました。私自身もその不安を経験していたので、どうやったらスムーズに現場に戻れるかということを考えました。

―取り組みを始めて何か変化はありましたか?

胡:私たちダイバーシティ推進室のメンバーが、子育て中の社員のメンター役として役立てるようになったと感じています。何か悩みがあったときに、相談を受ける機会が増えました。こちらも「最近、おたふく風邪流行ってない?」「子どもは大丈夫?」など積極的に声を掛けて社員の様子を知り、何かあれば現場や総務と共有するようにしています。それが離職抑止につながればと思っています。

あきらめずに続けること 必ず成果は出る!

―これから働き方改革、女性推進に着手する企業にメッセージをください。

胡:自分たちの会社で実際に抱えている問題から取り組むべきだと思います。「時代は女性活躍だから」「障がい者雇用促進しなくては」というところからスタートするのではなく、自分たちの問題をどうやってクリアするか、というところにダイバーシティの考えを取り入れる方が近道です。当社のダイバーシティ推進室も立上げ当初は実体がありませんでした。それが「ワタシすまいる」が稼働して改めて、女性活躍を進めるとこんなに会社としてメリットがあるんだと実感しました。
そして、とにかく続けることです。「ワタシすまいる」も1年目は土台作り、2年目からようやく花が咲き始めました。一部門から開始した取り組みが、採用・ES向上・業績向上と結果を出していき、全社へ影響を及ぼす取組みになっています。すぐに結果は出ませんが、あきらめずに続けることが大切です。

―イクボスとしての目標を教えてください。

倉方:時給社員で入社したママたちが力をつけてキャリアアップし、今は管理者として活躍しています。そこで、彼女たちのセルフマネジメントチームを作りたいと考えています。例えば、休みを取る場合、上司を介さずともチーム内でフォローしあってシフトを組み、相談やスキル補完もチームで推進する「ママ互助会」のようなシステムです。

また、かつての弊社と同じように人材確保に苦戦している企業に対してアドバイスする事業を始められないかと考えています。単なる社内活動ではなく、ビジネスとしてつなげていきたいですね。

―ボスも楽しく働くことが大切です。倉方さん、胡さんの生き生きポイントは?

倉方:心身ともに健康であるために、フルマラソンをしています。年間4,5レースは走りますね。オフシーズンは山登り。貧乏症なんで、家にいると損してる気分になっちゃう(笑)。これからの時期はトレイルです。そろそろ海外レースにも挑戦しようかと。入社して5年経つと長期休暇をいただけるので、それで行ってこようかと思っています。

胡:子どもに手がかからなくなったので、最近は主人と釣りに行っています。初めは魚をさばけなかったのですが、YouTubeでマスターしました(笑)。




倉方さん、胡さん、ありがとうございました!

現場主導で始まった女性活躍推進は、机上の空論ではなく、しっかりと会社の“文化”として定着していました。埋もれている“働きたい主婦層”の開拓実績は、他社も知りたいところではないでしょうか。今後の事業展開も楽しみです。

【インタビュー】倉方慶子さん・胡眞子さん(富士通コミュニケーションサービス株式会社)
〈企業情報〉

(聞き手:株式会社オフィスat 寺島みちこ)