【インタビュー】川森敬史さん|アビスパ福岡(株) 代表取締役

[公開日] [最終更新日]2017/05/28

女性活躍が支えた、アビスパ福岡のJ1復帰

【インタビュー】川森敬史さん|アビスパ福岡(株) 代表取締役
今回のイクボスインタビューは、Jリーグ・アビスパ福岡を運営するアビスパ福岡株式会社代表取締役・川森敬史さんが登場。債務超過によるJリーグ退会の危機に直面した時期もあったアビスパ福岡ですが、2015年3月に就任した川森社長の下、同社の売上げは9億4千万円(2014年度)から16億円(2015年度)へアップ。その経営手腕が注目されています。2016年シーズンより、アビスパ福岡はJ1に昇格。川森社長は、「支えてくれたのは女性社員ですよ」と話してくれました。

業務限定社員のチーム力がJ1昇格をサポート

―社長就任後、経営再建と効率化のために様々な改革を行ったそうですね。

川森:スポンサー獲得のために営業を強化しました。そうすると、比例して事務量も増えるんですね。今いるスタッフでは足りないので、どうしようかと考えて、地域にお住まいの方々を業務限定契約社員(以下、業務限定社員)として採用し、事務を担っていただくことにしました。AGA企業の一社として支援いただいているアパマンショップホールディングスでも、約180名の業務限定社員が働いています。2015年に、その雇用形態をアビスパ福岡にも導入しました。

子育てなどで働く時間に制限がある人材も、企業にとって十分戦力となるスキルを持っていらっしゃる方が多いと思います。企業がその方々に合わせることによって雇用が創出されれば、双方にとってメリットがあるのではないでしょうか。

―業務限定社員は、どれくらいいらっしゃるのですか?

川森:採用を始めた1年半前は2~3名でしたが、今では20名以上になり、チームを組んで業務にあたってもらっています。週3~4日勤務で、ほとんどが子育てなど時間的な制約がある女性です。

―その方たちの事務サポートがあるからこそ、スポンサーが186社(2014年度)から1010社(2015年度)と約5倍以上に増えても、組織としてきちんとまわっているんですね。

川森:皆さまの応援と選手の頑張りはもちろんですが、業務限定社員の働きもまた、J1復帰の後押しになったと思います。

社長と業務限定社員が直接意見交換

【インタビュー】川森敬史さん|アビスパ福岡(株) 代表取締役―業務限定社員に対して、どのような配慮をされているのでしょうか。

川森:雇用形態の整備とマネジメント層の理解促進です。業務限定社員という雇用形態を導入するにあたって、従来の出勤日数と勤務時間制限を変更し、柔軟に対応できるように社内規定を整備しました。

また、企業が雇用形態を柔軟にし、即戦力スキルを持った子育て世代人材を採用することの有用性について部門長に理解してもらう社内啓蒙も行いました。そして、業務限定社員と月に1~2回直接意見交換をするミーティングや、採用当初は直接面談も行いました。

―ミーティングでは、どういった話をするのでしょうか。

川森:社員からの要望や提案を聞き、それを会社としてどう対応するかを決め、次回のミーティングでフィードバックします。
例えば、定時で帰りづらいという話が出た時は、定時で帰るのが業務指示だということを現場に徹底しました。ただ、しばらくの間はその通りにしていても、数カ月経つとまた帰りづらい雰囲気になっていたようで…そこは、継続して何度も伝えないといけないですね。

―ミーティングで気をつけていることは何ですか?

川森:社員の話を最後まで聞くということです。あとは、真面目な話がずっと続くとみんな緊張してきちゃうから、笑いが出るような話もしないと。そこが一番気を遣いますね。

―イクボスでは、上司の心得の一つとして「傾聴、共感、称賛」を挙げています。まず傾聴されていると聞いて、さすがだなと思いました。

川森:社員の話を聞くのも仕事ですから。それが家庭でできたらと思いますけど(笑)。
私のデスクのドアはいつも開けているのですが、社員が嬉しいことがあった時は、わざわざ言いに来てくれるんですね。それって、すごいことだし、嬉しいことですよね。他愛もないことかもしれないけど、ちゃんと聞かないといけないなと思います。メールもくれるので、それも目を通します。

―業務限定社員からの提案で、サービス向上につながったことがあったら教えてください。

川森:お客様に会社からのご案内をメールやファックスで差し上げても、そんなにレスポンスはないんですよね。それを、以前コールセンターにいた社員からの提案で、電話でフォローするようにしました。「先ほどファックスをお送り致しました。会合の出欠のご返信をお時間のある時にお願いします」と伝えると、丁寧だなと思われますよね。

皆さん、社会人としての基礎を備えていますから、以前の勤務経験から来る知識と現在の業務のギャップ分析ができ、指示された業務をこなすだけでなく提案も活発に行ってくれます。社内が活性化し、業務改善が進みました。

業務限定社員の対応が、キャッシュフローに貢献

【インタビュー】川森敬史さん|アビスパ福岡(株) 代表取締役―他に業務改善につながった具体例はありますか。

川森:以前は、営業が自分で請求書を書いていたので、請求を忘れてしまうことがあったんです。営業マンって、申込を持ってくると“一丁上がり”という意識が強くて、契約だけとって満足しちゃう場合もあるんです。でも、会社というものは、入金があって初めて動くじゃないですか。今は契約を取って来たら、事務の方へお願いして請求書を発行という業務の流れが整いましたから、キャッシュフローが改善しましたね。

去年の話ですが、サッカーは1月~2月が移籍の時期で、キャッシュが非常に大事になるんです。しかし、試合がないから“入り”がないんですよ。スポンサーの契約は2月1日からですから、1月末までに入金をいただければいいのですが、もっと早くキャッシュが入るのであれば、会社にとって非常にありがたいんです。12月の忘年会でそういう話をしたら、翌日、皆さんが勤務日ではないのに出社して、請求書の発行をしてくれたんです。移籍金の調達にも貢献してくれました。

―自発的にしてくれたというのが、嬉しいですね。

川森:選手もここで働いている人も、エンブレムにすごくプライドを持っているし、チームに対する愛着がすごくあるんです。選手たちが一生懸命ピッチで戦っている姿が目に焼き付くので、社員の方も、自分がそれを崩しちゃいけないという思いがすごくありますね。

適材適所で、経営効率を追求

―イクボス・プロジェクトでは、「イクボス10カ条」というものを作っているのですが、ご自身にあてはめてみていかがですか?

【インタビュー】川森敬史さん|アビスパ福岡(株) 代表取締役川森:特に注力しているのは、時間捻出と業務改善でしょうか。社員の話を聞く時間を確保するということですね。しかし、ただ話を聞くだけでは日々の仕事が改善されません。きちんとそれを受けて業務改善までにまでつなげていく必要があります。

今は、営業と事務をつなぐ人材をさらに補強することが必要だと考えています。事務社員がディフェンダーとしたら営業がフォワードで、そこをつなぐボランチがもっと機能するようにしないといけない。新しい仕組みをどんどん作っていっているところです。

―ご自身のワークライフバランスはいかがですか?

川森:子育て期はなかなか家族との時間を持てませんでした。そこで、娘がまだ中学生から高校の頃ですが、うちの家族と社員とで、一緒に食事会をするようにしていました。子どもにはいろんな大人と関わりを持ってほしいと考えていましたし、ずっと僕の身近で仕事をしている社員も私の家族のことを知りたいんじゃないかなと思ったからです。子どもは今年就職しましたが、社会に出てからの方が、会話やメールが増えましたね。

―時間がない中でのコミュニケーションのとり方ということで参考になりますね。働き方や組織を変えたいけどなかなかできないという方に対して、メッセージをお願いします。

川森:私どもの場合は、会社の経営効率を考えていったら、女性活用、とりわけ主婦の皆さんの雇用を促進するかたちになったということです。適材適所、つまり、それぞれのスキルを生かせる雇用環境を創りだすのも企業の役割の一つと思います。

実際に業務限定社員として働く人の声は?

―業務限定社員のIさんにお聞きします。いつから働いているのですか?

I:結婚と同時に仕事を辞めましたが、妊娠、出産を経て、6年ぶりに社会復帰をしました。1年半くらい前からこちらで働いています。半年ごとの契約で、更新時に所属長と面談をしますが、勤務時間の調整や休みの曜日の変更など、いろんな要望に応えてくれます。無理だと言われることはありません。

―すごいですね。そんな職場はなかなかないと思います。

I:そうですね。もっと働きたいからと、勤務時間を延長した人もいますし、産休・育休を取った人もいます。すごく働きやすい職場ですから、やめるなんてもったいないです。

―子どもの事情などで続けられないと思ったことはありますか?

I:ありません。子どもの急病で欠勤や早退をしないといけない時も、臨機応変に対応してもらっています。上司や周囲の方から、「子どもの体調を第一に考えて、無理しないでください」という言葉をもらえるので、ありがたいなと思います。

―欠勤した場合、その日やらないといけない業務はどのように対応していますか?

I:欠勤の連絡をした時に必ず確認があります。情報共有しやすいように、普段から大事なものは共有のファイルに置くといった工夫はしています。

―社長ミーティングについて、どう思われますか?

I:最初は、何が始まるんだろうとびっくりしました。でも、ミーティングをやり始めて本音で話せるようになりましたね。それまでは女子トイレとか給湯室でしか話せなかった内容を直に上司や社長に言える環境があり、要望や提案を冷静に受け止めてくれる器もあります。それぞれの考えをみんなで共有する時間もあり、答えもきちんといただける。とてもいいフローだなと思います。

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【インタビュー】川森敬史さん|アビスパ福岡(株) 代表取締役川森社長、Iさん、ありがとうございました。

会社を訪れると、いろんな方が笑顔で顔を見て挨拶をしてくれるのが印象的でした。まさに一つのチームとして、選手だけでなく、社員もそれぞれの力を活かしてクラブを盛り立てています。リオデジャネイロオリンピックU-23日本代表選手も輩出した、アビスパ福岡の今後が楽しみです。

<企業情報>
  • 企業名:アビスパ福岡株式会社
  • 業種:市民クラブの運営(サッカー興業など)
  • 従業員数:(全体)36人 、うち(男性)12人 、うち(女性)24人
  • 本社所在地:〒813-8585 福岡市東区香椎浜ふ頭1-2-17
  • 企業URL:http://www.avispa.co.jp/